MAGGIE's Everyone's home of cancer care

認定NPO法人 マギーズ東京

PROFILE:
広瀬真奈美さん

1963年生まれ。がん経験者にリハビリエクササ イズを提案する一般社団法人キャンサーフィッ トネスの代表理事、Moving For Life Japanの 代表を務める。

http://cancerfitness.jp/

真奈美さんの息子
広瀬 怜さん

1996年生まれ。2014年春、慶応義塾高 等学校を卒業し、慶応義塾大学医学部 に在学中。大学では医学部体育会ゴル フ部に所属。矯正歯科医師の父をもつ。

息子の夢を 支えることが 私の原動力です。



がんの経験を通じて 親子がそれぞれ感じたこと


2008年、当時45歳だった広瀬真奈美さんは夜中に胸の痛みを感じ、しこりを見つけたことを機に受診。乳がんのステージ3だと診断された。乳房の全摘手術を受けるため入院することになり、絶望的な気持ちでいたという。

「笑顔のトレーニングの仕事で講演や企業研修、書籍出版と忙しくなり『やっとここまできたぞ』というときでした。充実していたので、これからそれができない、失うのだろうと思うとショックでしたね。自分自身が笑顔をつくれなくなって、辞めようかとも思いました」。


当時、息子の怜さんは中学1年生。 真奈美さんの夫であり怜さんの父であ る圭三さんから真奈美さんの病気を聞いた怜さんは、大粒の涙を流したそうだ。真奈美さんの入院中、学校が終わると病院まで毎日制服姿で通ったという。 真奈美さんは、そばにいる我が子の存 在に心からホッとしていた


その後、真奈美さんは抗がん剤や放射線による治療を必死で始める。多感な少年に、病と向き合う母の姿 がどう映ったのか。真奈美さんがそれを垣間見たのは、翌年のこと。学校の課題で怜さんが書いた、将来の夢についての作文だった。


「母が乳がんになって、もちろん本人もつらいけれど、家族もこんなに苦しい思いをするのだと痛感した。治療だけでなく、家族も含めて患者の心のケアもできるような医師になりたい」という内容だったのだ。


実は、圭三さんは歯科医師。怜さんは 子どもの頃から父に医師になることを 勧められていた。


「それまでは、いやいや勉強させられていたんです。勉強が嫌いでした。でも、母のがんをきっかけに『なろう』という気持ちが芽生え、それが力になりました」と怜さん。 彼は医師になるための猛勉強を始めた。それは真奈美さんにとって、息子の成長を感じた初めての出来事でもあった。


「彼が自分の道を見つけたのかなと 思ったら深く感動して、励みになりま した。『夢を叶えるまでは絶対に生きよ う』と思い、その道を支えることが私の 原動力になったのです」。



愛犬のwishちゃんと。怜さんが、がんの完治を願って命名した

親子で共に図 書館へ行き、それぞれが勉強をしていた時期もあった。努力が実って、怜さんは見事に医学部へ入学。現在、医師になるため学んでいる。


真奈美さんは、がんになって日常の意識や家族への姿勢が変わったと語る。


「がんになる前は、いつまでも生きられるような気持ちでいたんです。でも、それは決してないんだと。明後日はない ような気持ちで生きるようになりました。毎日が大切な1日だと思うと『自分自身を大事にしよう』と考えるようになったんです。同時に、残りの人生を人 に尽くして生きようと思い、それが幸 せだと感じるようになりました。家族 間でも、『お互いに後悔のないように生きよう』と相手を尊重する姿勢に変わりました」。


真奈美さんは術後、体がまひした感覚が取れず、大好きなゴルフができなくなってしまった。体のつらさを何とかしたいと始めたのが、運動。抗がん剤治療を受けながら専門学校に通ってフィットネス講師の資格を取得し、さらにアメリカ・ニューヨークでがん患者のための運動療法も学んだ。


がん経験者に治療後の体のケアを伝えるため、2011年に「乳がんフィットネスの会」 を、2014年に「一般社団法人キャン サーフィットネス」を設立し、悩む人を救いたい一心で活動を続けてきた。


現在は同法人の活動として、運動教室以外にがん経験者を対象に「ヘルスケアアカデミー」という健康づくりの講座も毎月開催している。「いつか医師になった息子と一緒に活動できたらいいなと思っています」と微笑む、真奈美さん。


毎月家族でゴルフをすることが、真奈美さんの楽しみの一つ。

2016年に治療が終わると指の痛 みの副作用が取れたため、ついにゴルフを再開した。以前のように家族3人でプレーすることが、真奈美さんの目標でもあったのだ。2017年2月には、以前3年間暮らしたことがあるアメリカ・カリフォルニアへ家族旅行に行くこともできた。


「がんと共に夢中で歩んできましたが、『がん経験者である前 に私はひとりの人間なのだ』と懐かし い土地で思い出すことができ、肩の荷がおりたような安堵を感じました。これからも家族の存在を支えに、新たなステージに進んでいこうと思います」。


本記事は、2017年に情報誌HUG「私を支えてくれた人」でご紹介したもので、記載内容は当時のものとなります。 WebマガジンHUGの掲載に際して、広瀬さんからメッセージが届いてます。


「この記事から4年が経過したのですね。治療中、私の生き甲斐だった息子もおかげさまで無事に医師になり家を出ました(涙)。そして、コロナ禍で私の生活も変わり、がん経験者への支援やご相談も増えました。その度に、私自身の“その頃”を思い返すことが増え、やっとじっくりと自分と向き合うことができたように思います。
私もあと1年ちょっとで還暦、これからは、優しい気持ちでおおらかに穏やかに生きていきたい。そして、出会う全ての方々との一期一会を大事にしたいと思っています。」

【広瀬真奈美さんは、下記も運営されています】
キャンサーフィットネス オンラインサロンHello!
https://cancerfitness.kokode-digital.jp
コロナ禍で運動不足のがん患者さんを対象にオンラインサロンを開設。毎日10分の運動クラスや、週1回は医療者や専門家とのトークを生配信。いつでも視聴可能な動画も満載です。体力回復、気持ちも前向きに!

Text & Composition: Keiichiro Koumura
Photo: Hitomi Kosaka

がんになってからの感情を整理できて
初めて“これから”を意識できるようになりました

「私とマギーズ東京」では、実際にマギーズ東京を訪れた方々の体験談をご紹介していきます。今回は、治療しながらの仕事に悩み、マギーズ東京を訪れた山本さん。しばらく足繁く通い、話をするうちに「自分自身で、やりたいことを考えられるようになった」と言います。一歩を踏み出すまでの山本さんのストーリーをご紹介します。



家族にも友人にも

つらい気持ちを話せなかった


 28歳で慢性骨髄性白血病の診断を受けました。実は私は当時社会人1年目で、同級生からは少し遅れたけれど、これから仕事をがんばろうと思っていた矢先でした。

 分子標的薬による治療の副作用を抱えながら、新しい仕事に取り組んでいくのは体力的にも精神的にもつらいものがありました。副作用がひどく、食べられない間に体力もどんどん低下していきましたし、薬を調整したり変更したりするたびに、残された治療の選択肢が減っていくような不安もありました。それに加え、高額療養費制度を利用しても薬の支払いが毎月数万円単位だったので、”生きるため”に働かなければというプレッシャーも大きくて。

 でも、そんな不安やつらい気持ちを、周りの誰にも話すことができなかったんです。家族や友人は心から心配してくれて、職場の上司や同僚も、働きやすいよう配慮してくれたのですが、私のつらさの根っこが病気というところにあるため、どうしても深い話ができませんでした。

 もちろん、副作用や医療的なことは都度担当医に相談していて、具体的な解決に繋がることもあったのですが、あなたに必要な治療なのでがんばりましょうと言われると「そうか、がんばるしかないんだな」と、それ以上のことは言えずに帰って来ることも多々ありました。




気づいたら丸一日

初めてのマギーズ東京訪問


 診断から1年半くらいが経ち、誰かに相談したい思いが募っていた時に、インターネットでマギーズ東京のことを知りました。「どんなところかわからないけれど、試してみよう」という気持ちで訪ねていったところ、それまで話せなかった、周りに話しても伝わらなかった思いを初めて話すことができたんです。金銭面、仕事面、医療面、自分の中でもはっきり分けられていないことをひたすら聴いてくれるんですね。休職中で朝イチに行ったのですが、看護師の方とお話をしたり、ただのんびりしたり、新型コロナウイルスの流行以前だったので、ちょうど開催されていたグループプログラムに参加をしたりして、気づいたら閉館の時間になっていました。

 その日参加したのは栄養のプログラムで、管理栄養士の方がかぼちゃのポタージュを作りながら、量が食べられない中でカロリーを摂る工夫なども話してくれました。今私は料理が趣味になっているのですが、じつはこのプログラムに参加したことがきっかけです。その時は、こうやって自分で工夫して作ったりすることで、食欲不振の中でも何か変われるんじゃないかと感じました。



 また別の日ですが、他の利用者の方とお話をする機会もありました。大きなキッチンテーブルに自然と集まった方々のお話を聞いていると、がんの種類は違っても共感する部分があり、視野が広がる経験をしました。

 マギーズ東京には、しばらく週1回くらいは通っていましたが、じつは、初めて自分の名前を伝えたのは、1年くらい経ってからだったと思います。それくらい、私にとっては肩書きや名前も気にせずに、ただ存在していていい場所でした(※)。



できることではなく

やりたいことに目が向くように


 マギーズ東京を利用して、いろいろな変化がありました。一番大きかったのは、がんになってからの自分の感情を整理できたことです。そして、だんだんこれからのことを考えられるようになっていきました。

 当時は、がんばってがんばって、それでも2度目の休職を余儀なくされていて、仕事についてすごく悩んでいた時でした。何度も通ううちに、居心地のいいマギーズ東京に「ずっといたい」「ここで働きたい」と思ったことも。でも、自分軸で考えられるようになってみると、家族や会社などいろんな社会に属している、そのうちの一つがマギーズ東京なんだろうなと、捉え方が変わっていきました。

 「できること」ではなく「やりたいこと」にチャレンジしてみてもいいのではないか、と思い直したのもその頃です。そして私は元の職場を辞めるに至ったのですが、休職中に登録した転職サイトのエージェントの方に、「転職は難しいでしょうね」と言われていました。自分の「できること」から仕事を探そうと、マギーズ東京でどこに具体的な相談をしたらいいかを聞きながら、転職活動についても練っていったところがあります。

 その中で、「相談はできるけども、やっぱり最終的に決めるのは自分なんだ」と徐々に自覚し、マギーズ東京に行く頻度を3ヵ月に1回くらいに減らして、自分で考える時間を持つようになりました。

 約2ヵ月間の転職活動の末、病院に就職が決まり、現在も病気と付き合いながら事務部門で働いています。病気に関わる社会の仕組みを学び、ゆくゆくは、マギーズ東京のような、リラックスして話せる場を作れたらなと、密かに夢見ています。どんな形かはまったくわかりませんが……。



 グループプログラムがきっかけで好きになった料理も続けていて、最近は特に頻繁に作っています。コロナ禍をただつらいだけで過ごしたくないから、自分自身を大切にしていこう、自分のやりたいことをやっていこうと思っています。



※本来は予約不要のマギーズ東京ですが、現在は、新型コロナウイルス感染症への対策として、ご来訪の前に連絡をいただき、お名前を伺っています。

山本さんにもご出演いただいたマギーズ東京5周年スペシャル動画「笠井信輔アナウンサーが歩くマギーズ東京」はこちらからご覧いただけます。

「私とマギーズ東京」では、実際にマギーズ東京を利用された方の体験談をご紹介していきます。

※ご紹介する了承を得られた方に、インタビューにご協力いただいています。

Photo:yu miyai
Text:yasco jimbo


フリーアナウンサーの笠井信輔さんが、マギーズ東京を訪問。今月でオープン5周年のマギーズ東京はどんなところ?

2019年に悪性リンパ腫と診断されたがん経験者でもある笠井さんならではの視点で、マギーズ東京の今を掘り下げます。



笠井 信輔 Shinsuke Kasai
フリーアナウンサー

東京都出身。1987年 早稲田大学を卒業後、フジテレビのアナウンサーに。
朝の情報番組「とくダネ!」を20年間担当後、2019年9月末日に退社し、フリーアナウンサーとなるが2か月後に血液がんの悪性リンパ種(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)と判明。4か月半の入院、治療の結果「完全寛解」となる。講演やがん知識の普及活動など幅広く活動し、人生の困難を乗り越えるエッセイ「生きる力~引き算の縁と足し算の縁」(KADOKAWA)を出版。



この日、マギーズ東京を初めて訪れた笠井信輔さん。





秋山正子センター長の案内でマギーズ東京を歩きます。





来訪者はどんな思いでここを訪れ、どのように過ごしているのか。





2組にじっくりお話を伺いました。






そして、感じたことは…?

「私もステージ4と言われたときに知っていればよかった!」





19分にぎゅっと凝縮された今のマギーズ東京を、ぜひご覧ください。



【動画の視聴はこちらから】





※こちらは、マギーズ東京5周年記念オンラインイベントで放映した特別企画動画です。

マギーズ東京にご興味、ご関心を持ってくださった方、ご利用されたい方へ。

お気軽にご連絡下さい。



マギーズ東京

  • 電話 : 03-3520-9913
  • メール : soudan@maggiestokyo.org
  • ホームページ : https://maggiestokyo.org
  • ホームペーグループプログラムスケジュール : https://maggiestokyo.org/calendar
  • 開館時間:平日10時〜16時、原則第一・第三金曜日は18時〜20時も

    Direction&Movie: Yu Miyai

    Movie: Akito Mishima

    Produce&Narration: Miho Suzuki

    PROFILE: MIKI ASAKURA

    1981年デビュー。復帰後は歌手活動を継続する一方、地元である神奈川県藤沢市で、乳がん検診を啓蒙する「ピンクリボンふじさわ」の実行委員長としても積極的に活動。

    ずっと歌ってきた 愛する歌を守ることで 乗り越えることができた



    テレビ番組の企画で乳がんが発覚して


     「ヒーロー」、「What a feeling」などのヒット曲で知られる歌手の麻倉未稀さんは、2017年4月に出演したテレビ番組の企画で受診した人間ドックで乳がんが発覚。6月には左乳房の摘出手術を受けることになるが、一連の流れの中心には常に“歌”があった。


     「デビュー35周年を迎えて忙しくしていたこともあり、人間ドックを受診するタイミングを逸していたんです。そんなときに、テレビの企画が持ち込まれて。この機を逃すと、またズルズルと先延ばしにしてしまいそうなので、お受けすることにしたのですが、そこで左胸に悪性腫瘍が発見されました」 


    じつは、その少し前から胸に違和感を覚えていたという麻倉さん。告知を受けたときは「やっぱり」という感覚だったという。


    「十数年前にも『乳がんの疑いあり』と指摘されて経過観察をしていた時期もあったので、思ったよりも冷静に受け止めることができました。それよりも、この後の仕事はどうしよう、治療はどうする、がんは公表するべきことなのか、そんな現実的なことで頭がいっぱい、というのが正直なところでした」


     都内から自宅に戻る1時間弱の電車の中で、麻倉さんは一つの考えに至る。


    「この電車の中で結論を出そう。そうじゃないと、いつまでも迷って決められない。そう思ったんです。その上で、やはり私は歌手であり、その自分が今、テレビ番組の企画という形でこの病気に出会ったことにはきっと意味がある。ならば、番組でがんを公表しよう。がんに向き合っている方々に、一緒に頑張ろうというメッセージを伝えたい。『ヒーロー』を歌い続けてきた自分にとって、それが一番ふさわしいはず。そんな考えに落ち着きました」


     麻倉さんにとって、生きることとは、すなわち歌うことでもある。治療方針を巡っても“歌”を守ることは大切なテーマだった。



    「未稀さんと一緒にいるとパワーをもらえます」(牧山さん)

    手術から3週間で復帰のステージに立つ


     「私が最初に考えたのは『歌をとるか、胸を残すか』ということ。乳房を切除することで歌えなくなってしまうとなれば困るけれども、担当の先生からも『手術をしても歌は続けられる』とおっしゃっていただき、迷いなく手術という方法を選びました」


     手術を受けたのが6月22日。3日後には歌うことを再開した。いざ発声してみると、やや体幹がずれていると感
    じるものの、しっかりと歌うことができた。そして、その3週間後の7月14日には復帰ライブのステージに立っていた。


    「手術前から決まっていた日程だったんですが、この日を復帰の目標にしようと。今振り返ってみると、少し無理をしたかなと思わなくもないですが(笑)、お客様の前でまた歌うことができて、本当に、心からうれしかった。私にとって歌うことは日常ですが、その日常が守りたい大切なものだということに改めて気づけた。だからこそ、がんを克服できたと感じます」


     共演する機会も多いバイオリニストの牧山純子さんは、がんを経た麻倉さんの変化をこう語る。


    「未稀さんご自身も驚いていらっしゃるんですが、じつは復帰前と後とで声や歌い方が変わっているんです。がんを乗り越え、その経験も織り込んで、さらに素晴らしい歌を届けてくれるようになって。私も隣で演奏しながら感動しています」


     テレビ番組の企画から始まった、少し特殊な麻倉さんのがん体験。プロの歌手として、代わりがきかない存在だからこそ、迷いを振り切れたし、大胆に決断できた部分はあるかもしれない。


    「でも」と麻倉さんは言う。


    「それは歌手という職業に限らないかもしれません。誰もが、例えば一番大切な家族を守りたい、そんな想いを根底に置いて、自分はどうするべきなのかを考えてみる。そうすれば、がんに対しても前向きに向き合っていけるのかな。そんな風に思っています」





    本記事は、2018年に情報誌HUG「私の小さな幸せ」でご紹介したもので、記載内容は当時のものとなります。
    WebマガジンHUGの掲載に際して、麻倉さんからメッセージが届いてます。


    「がんに罹患して4年、元気に過ごしております。コロナ禍でステージで歌えない日々が続いておりますが、歌や音楽はいつも私に勇気と力を与えてくれます。」

    Text & Composition: Keiichiro Koumura
    Photo: Hitomi Kosaka

    マギーズ東京は、がんに影響を受けたすべての人が自由に過ごしたり医療の専門家に気軽に相談できるだけでなく、無料で参加できるさまざまなオンライングループプログラムを開催しています。気になるプログラムはあるけれどなかなか勇気が出ない人もいるかも知れません。そこで、今回は「ストレスマネジメント」について、どのようにプログラムが進んでいくのかを具体的にご紹介します。


    オンラインでつながるマギーズ東京の無料のがん相談支援



    「ストレスマネジメント」プログラムって? 

    「心身に現れるストレスのサイン」や「わたしの充電方法」など、参加される方の気づきや工夫のシェアや、からだやこころをゆるめる方法を紹介していく約60分のプログラム。



    今回のプログラムの担当スタッフ

    栗原 幸江さん

    栗原幸江さん
    公認心理師。家族のがん療養経験をきっかけに緩和ケアに関心を持つ。アメリカのがん専門病院等で心理臨床やホリスティックアプローチの実践を積み帰国。日米でがんを経験した人やご家族の「内なる力」と「成長」に関わってきた。


    ##1

    まずは自己紹介とそれぞれのリラックス方法を紹介 


    栗原さんが優しくリードしていきながら、何度か参加したことのある人から順番に自己紹介、自分のストレスのサインとリラックス方法をシェア。それぞれのリラックス方法は「こんな方法もあるのか」と参考になることが多く、また栗原さんが補足情報として、気持ちが落ち着くツボやマッサージなど誰でも取り入れられるストレスマネジメントの方法を教えてくれるのもしい。 その日の参加人数は8人で全員ががん経験者でしたが、ご家族や友人が参加することもあり、いろいろな状況にいる方のお話を聴けるのも参考になります。

    ##2

    そこから自然な流れで呼吸と瞑想の導入へ 

    リラックス手段として呼吸に注意を向けたり、からだの感覚に気づいたりなど、瞑想にいざなう声かけ。軽くストレッチをしながら、からだの各部位の感覚をていねいに感じていきます。自然にゆったりと変化してゆく呼吸に気づいていく、無理に何かをしようとしない、などといった栗原さんの声に合わせていくと、からだが緩まり、どんどん心が安らいでいきます。

    ##3

    マギーズのお庭を紹介 

    ちょうど春のお花がたくさん咲いていたとき、参加者の中にまだマギーズ東京を訪れたことがない人がいたので、 栗原さんが外に出てパソコン越しにマギーズのお庭を紹介。マギーズに流れる穏やかな時間が 画面越しに伝わっていきます。 



    ##4

    感想や相談をお話しながらチェックアウトへ

    最後に一人ずつ感想を話してプログラムが終了。話し足りないことや相談したいことがあれば、 残って栗原さんに質問することもでき、そうして自然にチェックアウトしていく。

    まとめ

    参加・体験型のグループプログラム。参加者同士のつながりもあたたかく、気持ちがどんどん穏やかになる時間に。

    自分のからだや心をリラックスさせる方法を教えてくれるだけでなく、いろいろな状況の参加者がいるので、一人一人の生の経験や気持ちを知ることができ、「自分だけじゃないんだ」「こんな考えもあるのか」と参考になったり気持ちが軽くなったりしていく60分のプログラム。得られることがたくさんあると思うてので、迷っている人は是非一度参加してみることをオススメします。



    今回ご紹介した「ストレスマネジメント」プログラム以外のことでも、少しでも気になることがあったら、お気軽に下記マギーズ東京までご連絡してみてください。



    Text.Photo : Nana Tahara

    英国マギーズセンターCEOローラ・リー(以下、ローラ)と、マギーズ東京センター長秋山正子(以下、秋山)によるオンライン対談。後半は、今マギーズセンターが国際ネットワーク全体で発信する「HERE WITH YOU」について、さらに変化の時代にも必要とされるマギーズセンターの存在意義などについて語ります。

    対談前半「今こそ語りたいマギーズ流サポートのこと」の記事はこちら



    Laura Lee (ローラ・リー)
    マギーズキャンサーケアリングセンターCEO

    マギー・ジェンクスさんを担当した、がん専門看護師。マギーさんの発案からエジンバラセンターを立ち上げ、その後現職となり英国内外27カ所のセンターを牽引する。2019年英国女王からDame(デーム:社会に貢献した個人に贈られる一代貴族の称号)を授与された。

    秋山正子
    マギーズ東京センター長

    実姉のがんの在宅ケア経験から訪問看護師に。医療や介護について気軽に相談できる場をと、暮らしの保健室を開設。マギーズ東京を共同代表の鈴木美穂とともに設立し牽引。2019年、赤十字国際委員会からナイチンゲール記章を受章。

    COVID-19影響下の困難な時期
    「HERE WITH YOU」に込めた思い

    秋山
    環境や自然が大事になってくるという認識とともに、マギーズセンターでは「HERE WITH YOU」という言葉を今とても大切にしながら、国際ネットワーク全体でアピールしていこうとしていますね。日本語としては、「あなたとともにいる」なのですが、マギーズセンターが「HERE WITH YOU」を大切にしている理由と、言葉に込められた思いなどをお聞かせください。
    ローラ
    この「HERE WITH YOU」というのは、私たちはここにいますよ、の意味です。サポートを必要としている人に対して、もし私たちに寄りかりたいときは寄りかかって大丈夫ですよ、私たちはここにいてあなたが必要なだけ寄りかかっても倒れませんよ…という意味でHERE WITH YOUなのです。

    秋山
    なるほど。一般的ながんの支援の考え方とはどう違うのでしょうか
    ローラ
    「HERE WITH YOU」の対極は「Here to help you」でしょうか。一般に言われているがんのサポートであり、「私たちはここにいて、あなたをお手伝いします」ということですね。この場合は、計画を持っているのはお手伝いする側(医療側やサポート側)ですし、そのプロセスを引っ張っていくのもお手伝いをする側ですが、「HERE WITH YOU」では主体となるのはがんに影響をうけているご自身の側なのです。「実際にどのように、どれくらい時間をかけてやるのかを決めるのはあなたですよ」「あなたができるように私たちマギーズセンターは傍にいて必要なサポートをします。あなたができるように背中を押しますよ」というのが「HERE WITH YOU」です。私たちの存在はあなたのニーズによって変わりますし、私たちが何かを押し付けることはしません、というメッセージが込められています。
    秋山
    とても大切なことですね。
    ローラ
    また、この「HERE WITH YOU」のサポートは、東京でも英国のマギーズセンターでも同じ理念のもと行われていることで、場所によって変わるものではありません。ここにとてもよい例があります。東京と英国の両方でマギーズセンターを利用された方がいるのですが、場所は変わってもそこには同じ「HRER WITH YOU」の姿勢のチームがいて、同様のサポートを受けることができたそうです。素晴らしいと思います。
    どなたにもオープンなマギーズ東京のエントランス

    秋山
    本当ですね。ご本人が主体で、自分自身の力を取り戻すために水先案内するような姿勢は、マギーズ東京も同じです。
    もうひとつお尋ねしたいのは、ローラさんがマギーズセンターにスタッフを迎えるとき、どんな点を重視していますか?
    ローラ
    まず専門家としてのプロフェッショナリズムを持っていること。人を思いやるケアができる(人に寄り添える)感性を持っていることは重視していますね。同時に、アントレプレナーの精神を持っている人。アントレプレナーとはビジネスを起業するという意味でも使われますが、個人として正しいことをする、人に指示されたから動くとか、きまりに従うだけではなくて、個人としてこれが正しいと思ったことをゼロから始める開拓者のような意味があります。たとえば優れた心理を専門とする人や様々なスキルを持っている人が、そこで立ち止まるのではなくて、そのスキルを使って今自分の目の前にいる人に対してどうすればベストを尽くせるか、その人に対して何ができるかを常に考える姿勢、私はそういうところを見ています。
    また、マギーズセンターにぴったりな要素を持っているな、という直感の部分もあるかもしれません。
    秋山
    つまり、今ローラさんがおっしゃったスキルや姿勢を持つスタッフがマギーズセンターにいるということですね。

    マギーズセンターが必要とされる
    英国・日本での存在意義

    秋山
    次にマギーズセンターの存在意義についてお話を進めていきたいと思います。まずマギーズ流サポートの中の要素として「Educating(育む), Informing(情報提供する), and Empowering(エンパワーメントする)」という3要素を挙げておられますが、その理由を教えていただけませんか。
    ローラ
    実際にがんに影響を受けた方々が、私たちにお話してくださる気持ちに、自分は統制感を失った、自分で生活をコントロールできなくなった、希望がなくなった、やっても何もならない気がする、孤独に感じる、ほかの人から孤立してしまったような感じがするなどがあります。その人たちを支えていくためには、自分の生きる道をみつけていくための方向付け、航路を見つけてナビゲーションしていくということが非常に重要になってきます。そこで大切にしているのが先の3要素です。
    秋山
    エンパワーメントについてもう少し聞かせていただけますか。
    ローラ
    まず自分で情報を持ち、自身をより理解できるようになること。専門職のサポートや似た状況にいる仲間のサポートを受けることで自分がよい方向に向かっていくと感じられるようになること。それらをふまえて、自分が不安であったり、不眠であったり、ひどく心配な気持ちであったり、それに対し自分自身で対応できるようなスキルを身に着けられるようにすることをエンパワーメントと言っています。
    秋山
    はい。
    ローラ
    必要なのは、正しい情報を得られて、自分のものとして身に着けられるようにすることだと思います。そこではじめて自ら道を探していくスキルが身につくと考えています。
    秋山
    この困難な時期を過ごすにあたって、どういうサポートが必要であるかを表す言葉でもありますね。前にも、設立当初は25年経ったらがんが減ったり、医療も進歩してマギーズセンターはなくてもいい状態になるのでは、というお話がありましたが、実際は日本の死因の1位はずっとがんがトップ。男性の方が罹患率は高くて約6割、女性で4割強という、結局人口の約半分の方はがんになるという時代です。今もマギーズセンターは必要とされているし、今後ますます必要とされていくだろうと思います。これから先にめざすものを、ローラさんはどのようにお考えですか?
    ローラ
    これから先、医学の発展に伴いがんの治療も進化し、人々のライフスタイルが変わって、がんの発症がなくなったとしても、私たちの専門性を必要とする人はいるでしょう。まだ先の話かもしれませんが、そのような時代が来たら、がん以外の難病の方々にもマギーズ流サポートを応用できると思います。

    秋山
    マギーズ流サポートは、がんと共に生きる方々やご家族などが、自分の力を取り戻していくプロセスをとても大事にして、そこを応援するというスタイルです。これまでの医療側が主導権を握って関わるというのとは違ったアプローチの仕方で、新しいスタイルだと思うのです。マギーズセンターで試みられたことは、今後ほかの医療の現場でも使われていくのではないかと思います。25年前から、とても重要なことに挑戦してきたのではないかと思っているところです。

    ローラ
    私より上手に表現してくださって、ありがとうございます。
    秋山
    それでは最後になりますが、マギーズ東京に期待するものをお聞かせいただけますか。マギーズ東京もチャリティによって支えられています。今後も多くの方のご支援をお願いしていきたいと思っておりますので、ぜひ支援を頂いている皆様へのメッセージもお願いします。
    ローラ
    過去には、医療側が行ってきたサポートと、治療を受けている方やご家族が必要としているサポートに大きなギャップがありました。そのギャップを今までのルートとは違うところから埋めていこうとしているのがマギーズセンターです。マギーズ東京は本当に素晴らしいお仕事をこれまでもやってきました。しかし、がんのサポートには、私たちが必要と感じるところがまだたくさんありますので、それらを可能にするためにも多くの方々のお力が必要です。
    秋山
    マギーズセンターはCOVID-19感染が拡大するさなかでも、電話がつながったし、また扉を閉ざさずにいたという実績を積み上げてきました。医療機関や他の相談窓口がつながらない時でも、マギーズ東京にかけるといつも電話に出てくれる人がいて、必要なだけ話を聞いてもらえる安心感があるとご利用者さんから言われています。
    対面のほか、電話やメール、オンラインでの相談対応も続けるマギーズ東京

    ローラ
    そして、日本にマギーズセンターが東京に1か所だけでは十分とはいえません。これから日本全体にマギーズのサポートを届けていかなければなりません。そのためにもサポーターの皆さん、投資家の皆さん、ファンドレイザー(活動資金調達職)の皆さんに、お願いしたいことは、マギーズが活動の幅をさらに広げられるように、ぜひご支援をお願いいたします。将来もっと多くのドアが開いて、もっと多くの人がそこでサポートが受けられるように皆さんのお力をください。
    秋山
    私たちも同じ気持ちです。ローラさん、本当にありがとうございました。

    Text: Sachiko Hamabe

    Photo: Genki Moriya

    Interpretation: Kayoko Shigematsu


    告知された直後は、“まさか自分が? とにかく怖くて……” みんな不安な気持ちでいっぱいです。でも、大丈夫。まずは落ち着いて、 自分の状況や気持ちと向き合い、しっかり納得のいく選択をし、 前に進んでいくことが大事。大切なステップを踏んでいくためにやるべきことを経験者のアドバイスから、導き出しました。

    STEP 1|落ち着く

    1:心を落ち着ける

    がんになっても明日死ぬわけではない。まずは冷静になること。

    深呼吸。
    (T.Kさん 39歳・女性)

    自分に対して、 「強くなれ、強くなれ」と言い聞かせた。
    (A.Eさん 49歳・女性)

    過去のことは変えられない、 自分でコントロールできないことは悩んでも仕方がない。
    未来は自分次第。
    (O.Hさん 45歳・男性)

    落ち込んでから、治療と向き合えるように


    まずは深呼吸。最初は落ち込んだけれど、毎朝「今日も生きてる」と実感して「そう簡単には死なない」と感じた人も。がん経験者が身近にいた人は、「がん = 死ではない。治療しよう」と思えたそう。

    最初はショックを受けた経験者も、 1カ月後には約60%の人が前向きな気持ちに。「良くなるしかない」「負けてられない」の声も。

    2:大切な人に伝える

    無理せず、伝えたくなったらでいい。必ずあなたを支えてくれる。

    趣味の登山や自然探検の仲間が、「早く戻っておいで!」と声をかけてくれた。
    (H.Mさん 25歳・女性)

    両親は、 「全力で守るから安心して」と言ってくれた。
    (Kさん 46歳・女性)

    夫に「どのみち 人間の致死率は100%なんだから」 と言われ、 ホントそうだと思った。
    (Y.Tさん 56歳・女性)

    妻と婚約中だったが、 病気を伝えても「結婚する」と言ってくれた。
    (Yさん 38歳・男性)

    幼い子ども達の生活と治療、 夫が「休職して家族を 支える」と言ってくれ、心が軽くなった。
    (Yさん 40歳・女性)

    温かい言葉や気遣いが、心の支えになる


    両親、パートナー、妹、恋人、友人、医療従事者、がん経験者など、様々な声が寄せられた。「大丈夫」 「ちゃんと治療していこう」。心許せる人の温かい言葉は、前向きに治療と向き合うきっかけに。

     

    3:慌てて仕事をやめなくていい

    周りに迷惑をかけまいとやめてしまい、後悔している人も多い。

    がんを経験した後、 社会復帰して活躍している人を探して勇気づけられた。
    (N.Kさん 44歳・男性)

    職場にきちんと自分の状況を伝えて、相談して働ける環境を整えた。
    (E.Fさん 47歳・女性)

    仕事に没頭。
    職場の人に、早めに相談して一緒に悩んでもらった。
    (T.Kさん 32歳・女性)

    治療が落ち着けば、復帰も考えられるように


    「自分から復帰の道を閉ざさなくてもいい」「迷惑かけると自分を責めない」というアドバイスも寄せられた。働きながら治療する人もいる。まずは治療を優先して、職場に働き方を相談しよう。



    仕事、辞めなくて 良かった……!

    T.Aさん(44歳・女性)の場合

    Q 告知直後、仕事のことを考えましたか?

    娘と入浴中に胸のしこりに気づいて、検査の結果、乳がんが発覚しました。告知を受けたときは意外と冷静で、手術をすればすぐに仕事に戻れるという感覚でした。術後に 抗がん剤をしなければいけないと言われて、復帰のイメー ジが想定と大きく変わって、初めて現実を直視しました。 そのときの方がショックは大きかったです。理学療法士は体を使う仕事なので、どれくらいで戻れるのかがわからなくて悩みました。続けられるのかという葛藤はありましたが、辞めない方法や働き方を模索して、周りの経験 者からアドバイスをもらいました。


    Q それで、仕事の調整はどうしましたか?

    社会とつながっていたかったので、辞めることは最後に考えようと思いました。私の場合は、直属の上司に話して人事に伝えてもらいました。経過報告はメールで、退院後は職場に行けそうなときに顔を出すことから始めました。復職しても、すぐフルスピードに戻ろうと思わず、生活サイクルを慣らすことから始めること。リハビリ中の患者さんは、「職場からいつ戻れるのと聞かれても答えられない」「迷惑がかかるので辞めようと思う」という人が多いです。私は、復帰後あせりすぎて別の病気になりまた休職しました。長く働くためには、自分の体調を受け入れてブレーキをかけたりして減速して進むことも必要です。



    企業の人事担当に聞きました!

    病気になったとき、 相談してほしいこと

    カルビー株式会社 
    常務執行役員
    人事総務本部長 
    武田雅子さん

    「働きながら治療できる病気に。両立を考えて」

    「一時の感情で辞めないこと。まずは治療のことを考えて、使える休暇の種類や関連する就業規則、健保のルールを調べましょう。病理の結果が出てからになりますが、治療の見通しや働きたい意思を上司に伝えてください。何かあれば人事も相談に乗ります。まずは自分の持てる選択肢を知りましょう」

    STEP2|向き合う

    4:治療の情報を得る

    医者や専門家から、正しい知識を得よう。セカンドオピニオンも。

    疑問は、医師に質問して解消を。そのためにノートを用意して予習・復習した。
    (O.Tさん 55歳・男性)

    冷静に医師の話を聞けないと思うので、 誰かに来てもらうか、録音して聞き直すといい。
    (S.Tさん 33歳・女性)

    告知後、治療の説明を受けるまでの間に、聞きたいことを書いてリストにした。
    (Kさん 55歳・女性)

    正しく理解して、納得できる治療法を


    誰かと一緒に聞くなど、医師と話すときに工夫している人が多かった。治療方針や心身への影響、副作用などは「遠慮なく医師に質問を」の声も。セカンドオピニオンを聞くのもいいだろう。


    告知を受け知りたいと思ったことは何でしたか?(複数回答)

    告知直後、一番知りたいと思ったことは「治療のこと」を挙げた人は84%に上った。生活の変化も気になる人が過半数を超えた。


    経験者が語る「これを知って安心できた!

    同じ治療をして元気にしている人の話が聞けて、前向きなビジョンを持てた。
    (F.Mさん 34歳・女性)

    乳がんなら手術の方法と術後の胸の形。
    子どもを望める歳なら 妊孕性(にんようせい)の温存について聞いてほしい。
    (S.Tさん 33歳・女性)

    治療などの情報を何から得ましたか?(複数回答)

    医療サイトや経験者ブログなどネット上の情報や、医療機関での医師の説明などから治療のための知識を得る人が多いことがわかる。


    治療に関して、医師に聞いておいた方がいいことは?

    治療法のメリットとデメリットを聞く。
    もし提案された治療法に疑問があれば、セカンドピニオンを。
    (Tさん 33歳・女性)

    どんな治療で、どれくらいの期間が必要になるのかなど、 病気の全体像を把握することが大切。
    (Mさん 31歳・女性)

     

    5:使える制度を知る 

    知らないなんてもったいない行政や健保の制度や補助の確認を。

    生命保険に加入していれば、契約内容の確認を。 ペーパーワークが多いので、副作用が重くなる前にすませよう。
    (N.Kさん 52歳・女性)

    会社員であれば、就業規則などを確認すること。
    (Kさん 54歳・男性)

    会社の福利厚生や、 フォロー体制の確認を。
    (O.Yさん 43歳・女性)

    使える制度を確認して、ちゃんと申請しよう


    自分が加入している生命保険や健保を確認しよう。1カ月の医療費が高額になった場合には、区分に応じて限度額を超えた分が払い戻される「高額療養費制度」がある。治療の際は保険者に申請を。


    ※企業により対応は異なります。お勤めの企業の人事部などにお問い合わせください。



    就労支援するソーシャルワーカーに聞いた!

    行政と健保で使える制度

    医療ソーシャルワーカー
    福地智巴さん

    「治療や療養を中心とした生活に見直しを」

    「告知により生活や仕事への不安が生じると思いますが、治療や療養を中心とした生活の意識を持つことが大切です。家庭内の役割や経済計画といった生活設計の見直しも必要です」

    行政の支援制度例

    医療費の負担軽減のために高額医療制度を利用する場合、「限度額適用認定証」も保険者に申請し病院に提示しましょう。払い戻しが簡素化され用意するお金が少なくてすみます。


    健保の支援制度例

    健保には休職時の収入を補てんする「傷病手当金」制度があり最長1年半支給されます。条件を満たせば退職後も受給できます。退職すると申請できないので在職中に手続きを。

     

    6:自分の気持ちと向き合う 

    改めて自分がどう生きたいかを考えてみよう。



    「1年後、 どうなっていたいか」「欲しいもの」を、 希望ノートを書いた。
    (T.Kさん 39歳・女性)

    「自由になる時間」に やりたいことをたくさん挙げる。
    (K.Mさん 32歳・女性)

    治療の先にある 生活をイメージする。


    やりたいことや行きたい場所を思い浮かべて前向きになれた人や、日常生活を取り戻すために「早く元気になりたい」と思えた人も。書き出すことで気持ちが整理されるかもしれない。

     

    STEP 3|前に進む

    7:治療を選ぶ 

    しっかり自分の状況を把握した上で、納得のいく治療を選ぼう。



    2つの治療法で迷ったとき、医師に「先生の大切な人だったら、どうしますか?」と聞いた。
    (H.Mさん 25歳・女性)

    転院して、相性のいい主治医に出会えた。
    疑問を感じたら、 他の病院を検討してもいいと思う。
    (Nさん 34歳・女性)

    がん治療中の家族がいて、「標準治療を受けるのが当然」 という思いがあった。
    (Yさん 40歳・女性)

    あなたが納得できる 治療を選択しよう


    「標準治療」は、科学的根拠に基づき現在利用できる最良の治療とされ、一般的な患者に推奨される治療のこと。主治医の説明や治療方針などをふまえ、 自分に合った治療を選ぼう。

     

    8:仲間と出会う

    がんと闘う仲間がたくさんいる。良い情報や勇気をもらえる。



    若年性がん患者の会 「STAND UP!!」に参加。 みんなが笑顔で希望をもらった。
    (S.Tさん 33歳・女性)

    患者会に参加。 仲間に出会い「ひとりじゃない!」と孤独感から解放された。 これからも大切な仲間。
    (S.Tさん 47歳・女性)

    治療中に、 Facebookで病気を告白。
    たくさんの友人や経験者が応援してくれた。
    (T.Eさん 36歳・女性)

    患者会やSNS、仲間だから相談できることも


    告知直後、不安を抱えて泣いていた人も経験者の笑顔を見て元気をもらったようだ。「気兼ねなく話せる場所ができた」という声も。がん診療拠点病院の相談支援センターには地域の情報がある。



    仲間と出会う方法

    ● マギーズ東京

    がん患者やその家族らが、いつでも気軽に治療や日々の生活を相談できる英国発祥の支援施設。

    maggiestokyo.org/


    ● 患者会

    地元の患者会を、検索して探してみよう。がんの経験を生かして、自分で患者会を立ち上げた人もいる。


    ● SNS

    FacebookTwitterでコミュニティや仲間を探そう。

    Instagram で病名などを #で検索すると仲間が見つかることも。


    ● 相談支援センター

    各地のがん診療拠点病院にあり、各地域にある患者会や交流の場についての情報を集約している。

     

    9:職場に働き方を相談する 

    職場に治療中の働き方や、休職を希望する場合などの相談をしよう。



    信頼できる上司に 病気を伝え、 余裕をもった復帰時期を報告しよう。
    (B.Mさん 36歳・女性)

    職場へ相談すると病状を理解し治療と業務の両立に協力してくれました。
    (S.Hさん 51歳・男性)

    まずは希望する働き方を相談しよう

    休職する人も治療しながら働く人も、治療計画をふまえて上司などに働き方の相談を。治療を優先してゆとりを持った見通しを伝えよう。「そんなに頑張って早く復帰しなくてもいい病気」の声も。

     

    10:体力づくりをする 

    治療中は体力の低下を感じる人が多い。軽度の運動は気分転換にも。

    術後3カ月で、 ヨガを始めた。 ヨガ愛は止まらず、インストラクターの資格を取った。
    (O.Kさん 54歳・女性)

    ゴルフに行くために、 クラブを新調して練習場に通うように。体力を落とさないようにした。
    (G.Mさん 51歳・女性)

    写真の勉強を始めた。 必然的に外出でき、早く歩けなくても周囲にゆっくり目を向けることができた。
    (T.Eさん 45歳・女性)

    体調の良い日は、なるべく体を動かそう

    多くのがん経験者から「家にこもらない」「体を動かす習慣を」などのアドバイスが寄せられた。趣味や好きなことで体を動かして気分転換している人も多い。体調に合わせた体力づくりを。

    ※運動は、体調に合わせて担当医やリハビリ医の指導のもと行いましょう



    国立がん研究センターが紹介する

    治療中に効果的なトレーニング


    1  ウォーキング 

    楽に運動ができ呼吸も乱れず少し汗をかく程度の呼吸で、2030分間。週35日行うのが理想的。


    自転車エルゴメーター 

    エアロバイクともいわれる自転車の形をした室内用の運動器具。ウォーキングと同じ有酸素運動。


    ストレッチ

    軽い筋力トレーニングやストレッチも、機能を維持するために有効とされている。

    心を落ち着かせて、治療と向き合い、前に進んでいくための10のアドバイス。 仕事、仲間、体力づくり……
    経験者たちの貴重な声が参考になるはずです。

    ※記事内のデータおよびアンケートは、20175月に行った HUGアンケート104名(2050代の男女)の回答によるもので、この記事は、20171010日発行「『HUG1周年記念号」に掲載されています。



    Text: Kaori Sasagawa

    Composition: Naomi Oguriyama


    mugny(まぐにー)(イラストレーター)

    関西出身のイラストレーター。日常の感じたことをイラストにしWEBで発表している。

    twitter/Instagram:@mugnypic


    マギーズセンターは現在、英国を中心に世界に約30箇所。英国マギーズセンターのCEO、ローラ・リー(以下、ローラ)に、設立からこれまでのこと、2020年に発生したCOVID-19の世界的な流行下における変化などを、オンライン会議システムを使って、マギーズ東京センター長秋山正子(以下、秋山)が聞きました。



    Laura Lee (ローラ・リー)
    マギーズキャンサーケアリングセンターCEO

    マギー・ジェンクスさんを担当した、がん専門看護師。マギーさんの発案からエジンバラセンターを立ち上げ、その後現職となり英国内外27カ所のセンターを牽引する。2019年英国女王からDame(デーム:社会に貢献した個人に贈られる一代貴族の称号)を授与された。

    秋山正子
    マギーズ東京センター長

    実姉のがんの在宅ケア経験から訪問看護師に。医療や介護について気軽に相談できる場をと、暮らしの保健室を開設。マギーズ東京を共同代表の鈴木美穂とともに設立し牽引。2019年、赤十字国際委員会からナイチンゲール記章を受章。

    2021年世界的な変化における英国と日本のがんの現状

    ローラ
    日本の皆さんお元気ですか?そちらの状況はいかがですか。
    秋山
    東京では6月に入ってもCOVID-19の感染状況が落ち着きませんが、少しずつ気を付けながら毎日仕事をしています。
    ローラ
    2020年から続く長く厳しい日々に、誰もが精神的にダメージを受けていますね。がんの治療を行っている方々にも大変な時期だと思います。

    秋山
    そうですね。東京では緊急事態宣言が3回ほど発令されて(※)、人々が引き離されて家に籠りがちな傾向が続いています。

    (※)2021年6月1日現在。7月12日に4回目の緊急事態宣言が発令された。

    ローラ
    イギリスではCOVID-19の影響で、病院での診断が遅れて治療の開始も遅れるという事態に心を痛めています。
    秋山
    日本ではがん検診に行けないために、診断の遅れるケースがあるようです。さらに、がんを経験している人が、より強い孤立感を感じていることも心配です。いつもと違う環境を不安に思い、私たちを訪ねてこられるケースが多いので。
    ローラ
    イギリスも状況は同じですね。がんに影響を受けると、ただでさえ孤立感が深まる傾向にあるもの。今までだったら診察に家族が同席できたり、入院中もお見舞いができたりしました。でも、今はそれができない。医師から説明を受けるときも、治療を受けるときも1人。自分と同じような立場の人と話ができる場も少なくなっている。このため、自分だけがこんな経験をしているのではと思い込んでしまうようです。
    秋山
    そうですね。
    ローラ
    しかし、このような厳しい状況下でもマギーズセンターは扉を開け続けました。そのことがとても嬉しかったとのお声をいただいています。
    秋山
    マギーズ東京でも、2020年5月の緊急事態宣言下に2か月間だけは対面での相談は休止しましたが、オンラインを使いながら扉を閉めずにきました。現在でもオンラインや電話での相談も続けています(※)。ご利用者さんが話をされるうちに声のトーンが明るくなっていくという様子を、私たちは日々経験しています。 (※)2024年以降、ご相談は来訪いただいています。

    ローラ
    そうですね。安全に扉を開け続けたことを誇りに思ってください。

    創設当時から大切にしている “マギーズ流サポート”とは

    秋山
    がんに影響を受ける方への心理社会的なサポートが、長期にわたって必要なことが増えてきていると感じています。英国のマギーズセンターは1996年からスタートしましたが、当時から現在に至るまでの”センターでのサポート”について、改めてお聞きしたいと思います。
    ローラ
    英国のマギーズセンターも創設当初はパイロットプロジェクトとして動き始めた経緯があり、当時は本当にうまくいくのか、本当に続けられるのか、私たちも確信はありませんでした。
    そして25年後を考えたとき、がん治療も進歩して、がんで亡くなられる方は減って、がんとともに生きる方が多くなるだろうと想像していました。治療が進歩するおかげでマギーズセンターが関わるニーズは少なくなるだろうと思っていました。
    1996年にオープンしたマギーズセンター第一号、マギーズ・エジンバラ

    秋山
    実際はいかがでしたか?
    ローラ
    ところが思ってもみないことが起こりました。そのひとつが、がんと診断される人が増えたこと。当時は4人に1人ががんになるといわれていた時代でしたが、今は2人に1人といわれています。 また、がんとともに生きる期間が延びたことにより、再発を繰り返しながら長期治療していらっしゃる方が多くなりました。がんの治療を受けて寛解して、少し治療をしなくてよい時期があって、また再発をして…この繰り返しは、ご本人はもちろんご家族にもさまざまな影響を与えています。25年経てばマギーズセンターはあまり必要なくなると思っていたのは大間違いで、これまで以上に必要度を増しています。
    秋山
    まったく同感です。マギーズ東京はまだオープンして5年ですが、その変化は手に取るようにわかりますし、とても共感します。
    ローラ
    人々の考え方や環境・風土の変化による発想の転換も起きて、特にこの1年はCOVID-19の影響下でニューノーマルと呼ばれるライフスタイルへと移行しました。かつては治療に対して受動的な姿勢でしたが、今はご本人もご家族も、臨床チームと協力しながらセルフケアをしていく気持ちが強くなっています。それを叶えるために日々の暮らしの中でさまざまなことを徹底していかなければならないので、マギーズセンターの支援の意義が今まで以上に深まっている状況です。
    秋山
    病院などのサポートと、マギーズセンターでのサポート、つまり”マギーズ流サポート”との違いはどこにあるのでしょうか。
    ローラ
    マギーズセンターを訪れた方がおっしゃるのは、「マギーズのスタッフは“見る視点”が違うと。医療の現場だとどうしても医学的な治療が中心になってしまうけれども、マギーズでは“自分の生き方”が見出せる。がんによって自分が思い描いていた道が変わるかもしれない、自分の生きる期間もひょっとしたら変わるかもしれない、それでも自分の道を歩いていけると、前向きな気持ちにさせてくれるのがマギーズだ」とおっしゃっています。

    秋山
    そうですね。その境地にたどり着くために、マギーズセンターは建築を含めて環境面にもとても力点を置いていて、それも他の相談支援とは違う要素だと思いますが、いかがでしょうか。
    ローラ
    おっしゃる通りです。建物や自然が織りなす景観の重要性が、特にCOVID-19の?影響でより顕著に表れたと思います。マギーズセンターのがんに関するエキスパートがサポートをする際にも、素晴らしい環境下で行われることで、そのサポートを強化していると実感します。
    よく私たちは「Beauty」という言葉を使います。単に物理的なものに対する美だけではなくて、人々とふれあって、人々に受け入れられることから生まれる美しさというものもあります。「Beauty」は非常に重要で、その本質について学びを深めています。
    秋山
    私たちもここ数年、マギーズ東京周辺での、ガーデン作りを通して地域の方と「Beauty」を一緒に作り上げてきました。花と緑に囲まれて思うのは、自然がとても重要な役割を果たしているということです。マギーズセンターの環境や建物、それから周りの庭を大切にするコンセプトを、私たちスタッフもとても良いものだと実感しています。
    花と緑に囲まれたマギーズ東京

    ローラ
    非常に重要なことですね。自然は季節の移り変わりとともに刻々と変化しています。その自然の中に身を置くことによって、私たちは「時の流れ」について話ができます。刻々と過ぎていく今の瞬間、瞬間を大事にする意味について話を続けることができます。がんを患ったことで、時の流れによる変化を負の意味で捉えがちですよね。
    秋山
    そうですね。
    ローラ
    治療によって自分にこういう変化があったとか、死に近づくことによってこう変わっていくとか。つらい見方で受け止めていたこと、話すのが非常に難しいテーマについても、自然という大きな存在、その中での時の流れがそばにあることによって、とても意味のある形で会話ができるのです。自然に囲まれると、私たちも生態系の一部なのだとより実感しながら生きていくことができる…そういう意味でも環境や自然は今まで以上に重要になってくると思います。

    後半「『HERE WITH YOU』というメッセージに込めた思い」に続く
    8月下旬公開予定)

    Text: Sachiko Hamabe

    Interpretation: Kayoko Shigematsu

    Photo: Genki Moriya

                 Koji Fujii/TOREAL


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