MAGGIE's Everyone's home of cancer care

認定NPO法人 マギーズ東京

味方がいる、強くなれる 私を支えてくれた人 広瀬真奈美さん

2021/11/30

PROFILE:
広瀬真奈美さん

1963年生まれ。がん経験者にリハビリエクササ イズを提案する一般社団法人キャンサーフィッ トネスの代表理事、Moving For Life Japanの 代表を務める。

http://cancerfitness.jp/

真奈美さんの息子
広瀬 怜さん

1996年生まれ。2014年春、慶応義塾高 等学校を卒業し、慶応義塾大学医学部 に在学中。大学では医学部体育会ゴル フ部に所属。矯正歯科医師の父をもつ。

息子の夢を 支えることが 私の原動力です。



がんの経験を通じて 親子がそれぞれ感じたこと


2008年、当時45歳だった広瀬真奈美さんは夜中に胸の痛みを感じ、しこりを見つけたことを機に受診。乳がんのステージ3だと診断された。乳房の全摘手術を受けるため入院することになり、絶望的な気持ちでいたという。

「笑顔のトレーニングの仕事で講演や企業研修、書籍出版と忙しくなり『やっとここまできたぞ』というときでした。充実していたので、これからそれができない、失うのだろうと思うとショックでしたね。自分自身が笑顔をつくれなくなって、辞めようかとも思いました」。


当時、息子の怜さんは中学1年生。 真奈美さんの夫であり怜さんの父であ る圭三さんから真奈美さんの病気を聞いた怜さんは、大粒の涙を流したそうだ。真奈美さんの入院中、学校が終わると病院まで毎日制服姿で通ったという。 真奈美さんは、そばにいる我が子の存 在に心からホッとしていた


その後、真奈美さんは抗がん剤や放射線による治療を必死で始める。多感な少年に、病と向き合う母の姿 がどう映ったのか。真奈美さんがそれを垣間見たのは、翌年のこと。学校の課題で怜さんが書いた、将来の夢についての作文だった。


「母が乳がんになって、もちろん本人もつらいけれど、家族もこんなに苦しい思いをするのだと痛感した。治療だけでなく、家族も含めて患者の心のケアもできるような医師になりたい」という内容だったのだ。


実は、圭三さんは歯科医師。怜さんは 子どもの頃から父に医師になることを 勧められていた。


「それまでは、いやいや勉強させられていたんです。勉強が嫌いでした。でも、母のがんをきっかけに『なろう』という気持ちが芽生え、それが力になりました」と怜さん。 彼は医師になるための猛勉強を始めた。それは真奈美さんにとって、息子の成長を感じた初めての出来事でもあった。


「彼が自分の道を見つけたのかなと 思ったら深く感動して、励みになりま した。『夢を叶えるまでは絶対に生きよ う』と思い、その道を支えることが私の 原動力になったのです」。



愛犬のwishちゃんと。怜さんが、がんの完治を願って命名した

親子で共に図 書館へ行き、それぞれが勉強をしていた時期もあった。努力が実って、怜さんは見事に医学部へ入学。現在、医師になるため学んでいる。


真奈美さんは、がんになって日常の意識や家族への姿勢が変わったと語る。


「がんになる前は、いつまでも生きられるような気持ちでいたんです。でも、それは決してないんだと。明後日はない ような気持ちで生きるようになりました。毎日が大切な1日だと思うと『自分自身を大事にしよう』と考えるようになったんです。同時に、残りの人生を人 に尽くして生きようと思い、それが幸 せだと感じるようになりました。家族 間でも、『お互いに後悔のないように生きよう』と相手を尊重する姿勢に変わりました」。


真奈美さんは術後、体がまひした感覚が取れず、大好きなゴルフができなくなってしまった。体のつらさを何とかしたいと始めたのが、運動。抗がん剤治療を受けながら専門学校に通ってフィットネス講師の資格を取得し、さらにアメリカ・ニューヨークでがん患者のための運動療法も学んだ。


がん経験者に治療後の体のケアを伝えるため、2011年に「乳がんフィットネスの会」 を、2014年に「一般社団法人キャン サーフィットネス」を設立し、悩む人を救いたい一心で活動を続けてきた。


現在は同法人の活動として、運動教室以外にがん経験者を対象に「ヘルスケアアカデミー」という健康づくりの講座も毎月開催している。「いつか医師になった息子と一緒に活動できたらいいなと思っています」と微笑む、真奈美さん。


毎月家族でゴルフをすることが、真奈美さんの楽しみの一つ。

2016年に治療が終わると指の痛 みの副作用が取れたため、ついにゴルフを再開した。以前のように家族3人でプレーすることが、真奈美さんの目標でもあったのだ。2017年2月には、以前3年間暮らしたことがあるアメリカ・カリフォルニアへ家族旅行に行くこともできた。


「がんと共に夢中で歩んできましたが、『がん経験者である前 に私はひとりの人間なのだ』と懐かし い土地で思い出すことができ、肩の荷がおりたような安堵を感じました。これからも家族の存在を支えに、新たなステージに進んでいこうと思います」。


本記事は、2017年に情報誌HUG「私を支えてくれた人」でご紹介したもので、記載内容は当時のものとなります。 WebマガジンHUGの掲載に際して、広瀬さんからメッセージが届いてます。


「この記事から4年が経過したのですね。治療中、私の生き甲斐だった息子もおかげさまで無事に医師になり家を出ました(涙)。そして、コロナ禍で私の生活も変わり、がん経験者への支援やご相談も増えました。その度に、私自身の“その頃”を思い返すことが増え、やっとじっくりと自分と向き合うことができたように思います。
私もあと1年ちょっとで還暦、これからは、優しい気持ちでおおらかに穏やかに生きていきたい。そして、出会う全ての方々との一期一会を大事にしたいと思っています。」

【広瀬真奈美さんは、下記も運営されています】
キャンサーフィットネス オンラインサロンHello!
https://cancerfitness.kokode-digital.jp
コロナ禍で運動不足のがん患者さんを対象にオンラインサロンを開設。毎日10分の運動クラスや、週1回は医療者や専門家とのトークを生配信。いつでも視聴可能な動画も満載です。体力回復、気持ちも前向きに!

Text & Composition: Keiichiro Koumura
Photo: Hitomi Kosaka

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